虫歯が歯髄まで達すると
虫歯が歯髄に達してしばらくするとズキズキした強い痛みが出てきます。虫歯菌に感染した歯髄は全て取り除く治療(根管治療)が必要になります。根管治療を行うと最短でも5回治療がかかり、長いと半年もかかることもあります。最終的には全体を覆う被せ物を装着します。
歯髄がなくなると
・歯がもろくなる
・黒く変色する
・虫歯になっても気づけない
神経のない歯は、本来より寿命は約10年短くなり、また生存期間は平均5~30年になると言われています。自分の大切な歯を残すためには歯髄を可能な限り残す治療が望ましいと言えます。
歯の神経を残すための治療『生活歯髄保存療法(VPT)』とは
- 歯髄温存療法とは、虫歯や外傷などで歯の神経が傷ついたり、露出したりした場合に、神経を全ては取らずに一部感染したところだけ取り、残りの部分にはMTAセメントという特殊な薬を塗布し、歯髄を残す治療法です。歯の神経を残すことで、歯髄を取るデメリットを回避し、歯の寿命を延ばすことができます。
MTAセメント
MTAセメントとは生活歯髄療法の一つの方法で、虫歯が進行した歯の歯髄が刺激によって炎症を起こしやすい状態にある場合に用いられます。従来の治療では水酸化カルシウムを用いて歯髄の保護・温存を試みましたが、成功率は低く、神経摘出が必要な場合も多かったです。
最近では、MTAセメントを用いた治療が注目されています。MTAはケイ酸カルシウムを主成分としており、これを使うことで神経を残す可能性が高まりました。ただし、すべての虫歯に適用できるわけではなく、非感染歯髄に限定されます。治療の過程も重要で、虫歯の除去を含めた丁寧な処置が必要です。
MTAセメントを用いた治療のデメリットとしては、保険適用外であることが挙げられます。治療費用は患者にとって重要な要素ですが、MTAセメントは神経を残せる可能性や歯の切削を最小限に抑えられるというメリットもあります。
歯髄温存療法のメリット
①歯の神経や血管を残すことで、歯の感覚や栄養供給が保たれる。
②歯質が脆くならず、噛む力に耐えられる。
③根管治療をしなくて良いので回数や時間が少なくて済む。
通常複雑な根っこの治療を行うと最短でも5回治療がかかり、長いと半年もかかることもありますが、歯髄温存療法は2~3回ほどで治療を終えることが出来ます。
④ 歯を削る量を抑えられる
歯は削れば削るほどもろくなっていきます。
⑤歯の寿命を伸ばせる
歯の寿命が来た後は、入れ歯・ブリッジ・インプラントなどの治療法が挙げられますが、コストがかかるうえ、ご自身本来の歯に比べると人工物であるため100%元通りにはなりません。
歯髄温存療法のデメリット
①歯髄の状態を確定的に診断することが難しい。
全ての症状に対応できるわけではなく、適応できるかどうかも実際に虫歯部分を見てみないと判断ができないため、患者様の要望通りにできない場合があります。
②健康保険が適用されない。
詰め物・被せ物の費用も自費になるので、一般的な保険治療より高額になります。
③治療後しばらくして痛みが出て、神経を取る必要が出ることがある
稀に歯髄温存療法が一旦うまくいったとしても、場合によっては数ヶ月後・数年後に治療した歯の神経が死んでしまうことがあります。
歯髄温存療法の流れ
1、診断
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2、麻酔+ラバーダム
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治療する歯に局所麻酔をして、治療する歯への細菌感染を防ぐために、ゴム製のシートをかけます。
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3、虫歯除去+歯髄処置
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虫歯と感染した歯髄を削り取ります。そこに歯髄の再生を促すMTAセメントを詰めます。
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4、修復
1~3か月後様子を見て、症状がなければレジンやセラミックなどの材料を詰めたり、被せたりします。(痛みなどが出た場合は保険の神経を取る治療を行います)
歯髄温存療法の費用
項目 | 費用 |
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歯髄温存療法(MTAセメント) | 11,000円 |
+
前歯:樹脂の詰め物(ダイレクトボンディング) | 33,000円 |
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奥歯の部分的な小さい詰め物(セラミックインレー) | 44,000円 |
奥歯の部分的な大きい詰め物(セラミックアンレー) | 55,000円 |
全体覆う被せ物(セラミッククラウン) | 88,000円 |